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南北朝の動乱と社会

前回は「三国志」の舞台となった三国時代、そして五胡十六国時代について解説しました。今回は「魏晋南北朝時代」の南北の部分に焦点を当てて解説していきます。(魏晋とは曹丕の建てた魏と司馬炎の建てた晋のことです

華北では365年に北魏が成立し、五胡十六国をまとめ上げて439年に華北統一を成し遂げた。これと同時に江南では東晋が崩壊し、劉裕(りゅうゆう)によって宋(そう)が建国された。

→宋は都を建康(現在の南京)におき、のちに成立する王朝も建康に都をおいた。(江南に成立したため、それらをまとめて南朝という。南北朝南朝のことです)

5世紀半ばの宋と北魏(俊武作、wikipediaより)

→479年には宋に代わって斉が成立し、その後、梁(りょう)、陳(ちん)の4つの王朝が短期間に勃興した。特筆すべきこととして、梁では建国者の武帝によって仏教が保護され、南朝文化が栄えた。

→南北に別々の王朝が存在する状態はおよそ1世紀半にわたり、南朝という呼称以外に建康に都をおいた三国時代の呉と東晋を含めて六朝(りくちょう)と言うこともある。(呉の都は建業(けんぎょう)と呼ばれたが、場所は建康と同じである)

南朝の梁の時代に華北では積極的な漢化政策(社会↓)によって北魏が東西に分裂し、その後さらに東魏では北斉(ほくせい)が、西魏では北周(ほくしゅう)が成立した。最終的に北周北斉を吸収した。北魏東魏西魏北斉北周の五王朝を合わせて北朝と言う。(南北朝時代の北の部分に当たります)

東西に分かれた北魏南朝の梁(俊武作、wikipediaより)

→やがて北周の軍人であった楊堅(ようけん)が陳を倒して南北朝時代をおわらせ、中国を統一した。(この部分は近いうちに解説します)

・ここからは、魏晋南北朝時代の社会の仕組みについて解説します。

魏 郷挙里選に代わって九品中正(きゅうひんちゅうせい)という官吏登用制度が実施された。地方に中正官と呼ばれる役人を配置し、その役人を通じて人材を推薦するものである。推薦にあたり人材は9つの階級にわけられた。貴族の子弟が推薦されることとなり、家柄が固定されて貴族の力が強くなった。(このことは南北朝時代を通して言える)また、屯田制(とんでんせい)という国家主導で官有地の耕作を行う政策がとられた。

晋 占田・課田法(せんでん・かでんほう)を実施したとされるが、詳細は分かっていない。

北魏 第6代皇帝の孝文帝(太武帝は3代目)は均田制や三長制を行った。均田制とは農業振興策の一つで、成年男子とその妻に対して死後または70歳で返還させる露田(ろでん)と世襲の桑田(そうでん)を支給し、その収穫を税として取り立てるものである。また、三長制とは村落制度のことで、5家を隣、5隣を里、5里を党とするもので、これによって税を均等に徴収することを目的とした。

また、都を平城(へいじょう)から洛陽に遷すとともに、鮮卑族の言語や服装を禁止し、漢族との融合をはかる漢化政策を行った。(結果は↑で述べた通り)

・ここからは南北朝時代の文化について解説します。

華北 魏晋南北朝時代では仏教が中国に広まり、西域出身の仏図澄(ぶっとちょう)や鳩摩羅什(くまらじゅう)が華北での布教、仏典の漢訳に努め、東晋の僧であった法顕(ほっけん)はインドへ出向いて仏教を学び、その道中のことを旅行記「仏国記」として著た。また、敦煌(とんこう)や雲崗・竜門(うんこう・りゅうもん)では粘土や石材を用いて仏像が作られた。(雲崗・竜門は北魏の時代から作られ始めた)さらに、仏教の影響を受けて仙人や不老不死といったものを信じる神仙思想と道家の思想が合わさって道教が誕生した。道士の寇謙之(こうけんし)は北魏の太武帝による保護を受けた。

敦煌石窟(Zhangzhugang作、wikipediaより)

江南 華北と異なり江南では仏教はあまり広まらず、貴族層に知識として知られる程度であった。魏・晋の時代には俗世に背を向け竹林などで自由な議論を行う清談(せいだん)が知識人の間で流行した。ちなみに、万葉集には「古の七の賢き(さかしき)人どもも欲(ほ)りせしものは酒にしあるらし」という大伴旅人の歌が収められており、この「七の賢き人ども」は清談を行っていたことで知られ、竹林の七賢と呼ばれる阮籍(げんせき)らのことを指している。

また、文学では陶潜(とうせん)や謝礼運(しゃれいうん)の詩や、四六駢儷体をもちいた昭明太子(しょうめいたいし)の「文選」が有名である。絵画では顧愷之(こがいし)が、書道では王義之(おうぎし)が代表的な人物である。

顧愷之の女史葴図のレプリカ。実物は現存していない。

今回までで春秋戦国時代から魏晋南北朝時代までの中国を解説してきました。次回はこの間の東アジア特に朝鮮半島と日本の様子を解説していきます。サブスクライブしていただけると励みになります。